剣王朝~乱世に舞う雪~

    「GO!GO!シンデレラは片想い」のリー・シエン(李現)、「晩媚と影~紅きロマンス~」のリー・イートン(李一桐)主演のユニークな武侠ドラマです。意外性あるストーリー、細部まで作り込まれた華麗な武侠アクションはもちろん、「三国志 Three Kingdoms」で呂布を演じたピーター・ホー(何潤東)やベテラン俳優のリー・グァンフー(李光復)、リウ・イージュン(劉奕君)など豪華キャストが脇を固めており、独特の見どころがあります。

    ★あらすじ
    巴山剣場の剣首・梁驚夢(りょうけいむ)は天下統一を目指す蘅国の王・元武(げんぶ)を助け、烈国を滅亡させます。しかし、その功績の大きさと名声を恐れた元武は、梁驚夢の婚約者・葉甄(ようけん)と一部の巴山剣士を取り込み、彼をわなにかけて抹殺します。それから10年、長孫浅雪(ちょうそんせんせつ)と丁寧(ていねい)は蘅の都・風鳴で酒場を開業します。するとすぐに、蘅の官吏で元巴山剣士の宋神書(そうしんしょ)と蘅国十一侯に名を連ねる独孤侯(どっここう)が暗殺されます。驚夢を陥れた者たちへの復讐を胸に、密かに腕を磨いてきた2人が行動を開始したのでした……。

    リー・シエン演じる丁寧とリー・イートン演じる浅雪の復讐物語を軸にしたスピーディーな展開に引き込まれて最後まで見てしまい、見終わった後にはしみじみとした後味が残る作品です。中国では熱心なファンから強く支持されました。34話と比較的短く、復讐という軸がしっかりしているため、途中でダレることなくイッキ見してしまうこと請け合いです。個人的にはゲームが好きな人、武侠ドラマに興味があるけど本格長編大河ドラマみたなのはちょっと敷居が高いかなと思う方におすすめしたいと思います。ポイントを絞ってご紹介しましょう。

    ★丁寧の成長がまるでゲーム

    各剣士の内力(気の力)は一境(通玄)から九境(長生)と数字を伴って示されるため、実力がとどれくらいかすぐに分かります。復讐を果たすには、厳しい修行を積んで大きくレベルアップする必要がある丁寧は、白羊洞に入門しますが、わずか半日で一境に、10日で二境に上り皆を驚かせます。また、不思議な宝物(アイテムですね)を手に入れて成長することもあります。そして、丁寧の「境」が上がるたびに、対決する相手も強くなっていき、最後に待っているのは八境に到達した元武(ボスキャラ?)ということになるわけです。一方、丁寧のアドバイスを受けた仲間たちが、それぞれ自分に合った剣を探して手に入れ、パワーを増していくところもゲームっぽくてわくわくします。

    ★魅力的な脇役が多数登場

    腕が立ち頭が切れるだけでなく、正義感や人を思いやる気持ちが強い丁寧の周りには、自然に良い仲間が集まって来ます。そして、それらの仲間や協力者はそれぞれに個性的です。特に印象的な2人を見てみましょう。

    1人目は、蘅の官吏で秋水剣の使い手・夜策冷(やさくれい)です。クールな女剣士で、独自の目的を持って行動する中で丁寧と関わるようになります。演じたチャオ・ユエンユエン(趙円瑗)は宝塚の男役のような美しさで、華麗な剣さばきと憂いをたたえた表情のミスマッチがなんとも言えません。戦いに勝利しても少しの達成感も見せず、むしろ悲しそうな顔をする彼女からは、待ち受ける運命を感じないではいられません。

    もう1人はシャオ・シュー(肖旭)が演じる、どら息子・謝長勝(しゃちょうしょう)です。コミカルなキャラクターで、戦闘や冒険のシーンが多く緊張する視聴者を笑いでリラックスさせてくれます。丁寧を勝手に姉の婚約者と決め付け、「兄上」と呼んでなれなれしいのですが、こうしたキャラにありがちな足手まといのトラブルメーカー、中国語で言うところの「猪隊友」ではなく、金にあかせて大事な情報を集めてくるなど、けっこう「使えるやつ」です。ほかにも魅力的な人物が丁寧と関わり、それぞれの物語を見せてくれます。

     

    ★丁寧と浅雪のじれったい関係

    ラブシーンの多いドラマではありませんが、丁寧と浅雪の、発展するかと思えば立ち止まる関係には、見ていてじりじりさせられます。浅雪は梁驚夢から指南を受けたことがあり、彼を慕っていましたが、一族が彼らの戦いの巻き添えとなって滅んだことで恨みも持っています。このため、丁寧の言動に亡くなった驚夢の面影を感じながらも距離を置こうとし、つっけんどんな口ぶりと親身に気遣う態度が入り交じります。武侠ドラマ界きっての美女・リー・イートン演じる浅雪のツンデレぶりはもう、たまりません! 一方、丁寧はそんな浅雪をからかったり、時に甘えたり、陰で心配したりと、年下男子の魅力全開。これまでとはひと味違ったリー・シエンが見られます。

    これら以外にも見どころが多く、見終わった人同士であれこれ語りたくなる作品だと思います。「武侠ドラマはあまり……」という「食わず嫌い」な方にもおすすめします。

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    文:井上俊彦

    記者・翻訳者。テレビ情報誌出版社勤務を経てフリーの記者に。中国映画の熱心なファンで、上海と北京で生活した8年間に約700本の作品を劇場で鑑賞。中国ドラマ体験は「還珠姫 〜プリンセスのつくりかた〜」の時代からで、日本にいながら最新の作品が大量に見られる現在は「いい時代になったなあ」のひと言。


     

    ※本ブログは執筆者からの寄稿文を掲載しています