第14回大阪アジアン映画祭(OAFF2019)コンペティション部門出品作として日本初上映された中国映画『過ぎた春』(原題:過春天)が、『THE CROSSING ~香港と大陸をまたぐ少女~』という新しいタイトルに変えて、今年の秋に日本で一般公開が決まりました。
タイトルを見てお分かりのように、本作は深センと香港を「越境通学」する女子高生の物語です。父親が香港人、母親が中国人の16歳高校生ペイが、毎日深センからボーダーを越えて香港の高校に通うところから始まり、親友との北海道旅行を夢見て、スマホ密輸グループに巻き込まれました。
作品の背景として、1997年に香港が中国に返還されて、香港と隣接する経済特区深センとの経済往来が頻繁になり、香港人が深センに愛人を作ることが多かったことです。本作主人公のペイは、こういう背景で生まれて、深センに家を置きながら香港のIDを持ち、小さい頃から「越境通学」を始めました。
さらには、中国の一国二制度により、香港では関税の優遇措置が講じられ、それによりスマホや化粧品、ベビー用品などの商品が割安で、香港の商品を大陸へ密輸して儲かる商売もそういう背景の中で生まれました。
二つのアイデンティティを持ち、引き離された文化の中に生きている主人公のペイ。現代社会で起きている様々な越境問題を重ねながら、青春の瑞々しさと揺らぎをビビッドな音楽と共に表現し、今まで中国映画であまり描かれることのなかった青少年の裏事情、香港と中国大陸の現状をリアルに描きました。
2018年第43回トロント国際映画祭でのワールドプレミア以来、2018平遥国際映画祭Fei Mu Awards最優秀作品賞受賞、OAFF2019来るべき才能賞受賞(監督)など、数多くの賞を受賞し、白雪(バイ・シュエ)監督の初長編作として注目されました。
主演を演じるのは、中央戯劇学院を卒業したばかりの新人女優 黄堯(ホアン・ヤオ)。エクゼクティブプロデューサーは、『青い凧』、『狩場の掟』、『盗馬賊』などの監督作品を持つ田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)。
作品情報
タイトル : THE CROSSING ~香港と大陸をまたぐ少女~(原題:過春天/英題:The Crossing/日本語旧題名:過ぎた春)
監督・脚本: バイ・シュエ(白雪)
出 演: ホアン・ヤオ(黄堯)/スン・ヤン(孫陽)/カルメン・タン(湯加文)/エレン・コン(江美儀)
ジャンル : ヒューマン・ドラマ/犯罪
製 作: 中国大陸
言 語: 北京語、広東語(日本語字幕)
公 開 日: 2019年3月15日(中国)/2018年9月8日(トロント国際映画祭)
受賞歴
2018年第43回トロント国際映画祭:ディスカバー部門 ネットパック・アワードにメンションされる
2019年第69回ベルリン国際映画祭:ジェネレーション部分最優秀賞作品賞(ノミネート)
2018年第2回平遥国際映画祭:最優秀作品賞・最優秀女優賞(ノミネート)
2019年第14回大阪アジア映画祭:来るべき才能賞受賞
2019年第13回アジア・フィル・アワード:最優秀新人監督・最優秀新人俳優(ノミネート)
2019年第43回香港国際映画祭:ヤング・シネマ・コンペティション部門ファイバー賞受賞、最優秀女優賞受賞
2019年第19回中国語映画メディア祭:最優秀新人監督賞受賞
2020年第28回上海映画祭批評家協会賞:新人女優賞